6歳の「わからない」の裏側にあるもの。言葉に詰まる娘と一緒に、哲学の扉を叩くまで
「なんで嫌なの?」
そう聞くと、娘はいつも決まってこう答えます。
「わからない」
考えていないわけではなさそうです。でも、理由が言葉にならない。
この「わからない」という一言が、私の悩みの始まりでした。
6歳の子が「理由がわからない」と答えるのは、考えていないからではありません。
ある日のプールの話
6歳の娘に、いつも通っているプールの春季講習に行くかどうか聞いてみました。
「行く!」
元気な返事。でも、申し込み前に念のためもう一度確認しました。
「ちなみにね、いつもの午後じゃなくて、午前中なんだよ」
すると、娘の反応が一転しました。
「それなら、行かない」
え? さっき行くって言ったよね?
「なんで午前中だと行かないの?」と聞いても、返ってくるのは沈黙です。
「なんで?」「何が違うの?」
問いを重ねるほど、私の中にイライラが溜まっていきます。
娘は何も答えません。「わからない」の一点張りです。
「……午前中は、お家で遊びたいから?」
そう助け舟を出して、ようやく、
「そう」
と、小さく答えが返ってきました。
内弁慶な娘と、これからの小学校
娘はもともと内弁慶なところがあります。
「これはなに?」といった、事実を確認する質問には答えられますが、
- なんでそう思ったの?
- どうしたいの?
といった、自分の内面や理由を問われると、パタンと口を閉ざしてしまうのです。
小学生になれば、先生や周りの友達から「なんで?」「どうしたい?」と聞かれる場面はきっと増えます。
保育園のように、先生がじっくり待ってくれる時間は少なくなるかもしれません。
ハキハキした子や、声の大きい子たちの中で、もじもじして置いていかれることもあるでしょう。
それはそれで大切な経験ですし、子どもが「失敗する権利」でもあると思っています。
それでも――。
もし「自分の思いを伝えるトレーニング」を少しずつ積むことで、娘が自分にとって過ごしやすい環境を、自分の力でつくれるようになるのなら。
母としてできることを、無理のない範囲で探してみたいと思ったのです。
「わからない」は思考停止ではない
娘をじっと観察していて、たどり着いた考えがあります。
それは、「わからない=考えていない」ではないということです。
娘の中に、感情や違和感はちゃんと存在しています。ただ、言葉にするまでにいくつかの「壁」があるようでした。
- 語彙力(言葉)がまだ足りない
- 自分の心の中を覗く習慣がない
- 「正解」を求められている気がして怖い
アウトプット以前の段階で止まっている娘のために、まずは親としての「前知識」と「心の準備」から整えることにしました。
大人のための前知識:親が「正解」を求めないために
「うまく答えさせなきゃ」「理由を言わせなきゃ」
親がそう意気込むほど、子どもは身構えて黙ってしまいます。
まず、親の視点を変えるため、そして対話の導き方を知るためにおすすめしたいのが、こちらの3冊です。
- 『親子で育てる ことば力と思考力』(今井むつみ)
親がどう問いかけ、どう導けばいいかのヒントが詰まっています。 - 『自信をもてる子が育つこども哲学』(川辺洋平)
子どもの「なんで?」を大切に受け止める視点を与えてくれます。 - 『じぶんで考えじぶんで話せるこどもを育てる哲学レッスン』(河野哲也)
実践的なレッスンを通じて、自分の考えを言葉にする「コツ」を親が学ぶことができます。
ここで学んだのは、大切な心がけでした。
- 子どもの考えに、正解も不正解もないこと
- 答えはすぐに出なくていいこと
- 考えている「途中」の状態を尊重すること
わが家の「言語化・思考力トレーニング」3ステップ
準備が整ったら、いよいよ娘とのトレーニングです。いきなり「なんで?」と聞くのはハードルが高いので、3つのステップで進めています。
ステップ1:一問一答で「答えること」に慣れる
まずは「好きな食べ物は?」「好きな色は?」といった、答えが自分の中にある簡単な質問から。
- 『しつもんブック100』(tupera tupera)
- 『質問絵本』(五味太郎)
ステップ2:理由を「考えてもいいんだ」と思える質問へ
次に、一歩踏み込んで「なぜ?」や「相手の気持ち」を覗く練習です。直接自分のことを聞かれるより、物語の力を借りることで、娘もぐっと話しやすくなります。
- 『5歳からの哲学――考える力を養う親子の対話』
身近なテーマから、物語のように一歩深い「なぜ?」の世界へ。親子で対話を楽しみながら、思考の根っこを育てるのに最適です。
ステップ3:正解のない世界「こども哲学」へ
最後は、いよいよ哲学の時間です。ここでは答えが出なくても構いません。「そう思うんだね」で終わっていい安心感を大切にしています。
- 『てつがくおしゃべりカード』
「友達ってなに?」といったカードを引いて、自由に話をします。
【番外編】いつか取り入れたい一冊
- 『こども哲学図鑑』(河野哲也)
こちらはもっと大きくなった子向けの読み物ですが、探していて面白そうだったので自分用に。まずは私が読んで楽しみ、娘が高学年くらいになったら一緒に取り入れたいなと思っています。
土台作り:言葉のバリエーションを増やす
自分の内面を自由に表現するには、やはり「言葉のストック」も助けになります。
- 『こども語彙力クイズ366』(高濱正伸)
- 『マンガ×くり返しでスイスイ覚えられる1200の言葉』(陰山英男)
自分の内面を言葉にすることは、自分を自由にすること
自分の気持ちや考えを言葉にできる力は、「自分を理解すること」と「他人に伝えること」の両方につながっています。これから先、娘が壁にぶつかった時、自分を救う鍵になるはずです。
「友達は大事だよ」と教え込むのではなく、
「友達って、大事なのかな?」「なんでそう思うんだろう?」と一緒に考えたい。
周りに合わせた答えではなく、自分の中に自分なりの答えを持てるように。
娘の小さな哲学を、これからもゆっくりとサポートしていきたいと思っています。


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